第16回日本骨盤臓器脱手術学会学術集会

会長あいさつ

今回の学会は、「Going Beyond the Legacy」をテーマとして、大阪の地に皆様をお招きいたします。

骨盤臓器脱に対する手術治療は、2005年のTVM (Tension free Vaginal Mesh) 法の登場により大きく変貌いたしました。本学会は、その翌年に発足して、我が国におけるTVM手術手技の普及と、安全性の向上に寄与してきたと自負しております。2011年のFDAの警告を発端として、世界的にはTVM法を制限する流れとなりましたが、我が国においては、諸外国において問題とされているような合併症の発生率が低く、現在も引き続きこの方法は有効な手術治療として実施されています。

一方で、腹腔鏡下仙骨腟固定術 (Laparoscopic Sacrocolpopexy, LSC) が骨盤臓器脱手術の術式として重要な位置を占めるようになり、近年ではロボット補助下手術が急速な普及を見せております。我が国においても、これらの術式が急速な広がりをみせており、それらに伴って、より幅広い層の医師が骨盤臓器脱の手術治療に携わるようになってきました。骨盤臓器脱は、良性機能性疾患であることから、機能回復と同時に子宮温存や低侵襲化といった患者ニーズに応えることが重要であり、治療の個別化ががん治療などに比べてより求められています。

腟式手術を中心とした従来術式 (Native Tissue Repair, NTR)は、依然として骨盤臓器脱手術の基本と考えますが、腹腔鏡や経腟腹腔鏡手術(V-NOTES)によるNTR術式が保険収載されたことで、NTRについても新たな展開が始まっています。

このように骨盤臓器脱の手術治療はますます多様性を増しています。これらの多様化した術式を適切に選択して使い分けを行うためにも、それぞれの術式の技術的成熟のためにも、骨盤底修復を担う婦人科、泌尿器科、外科の三科が一堂に会して議論を行う本学会の役割がますます重要となってきているものと考えています。これまで様々な術式を紹介し、普及を手助けしてきた本学会とそのメンバーのレガシーを受け継いだうえで、本学術集会を今後の日本、ひいてはアジアにおける治療の流れを切り開く契機としようという思いをテーマに込めました。

3年ぶりに設けるアジアンセッションでは、海外からの演者をお迎えして、各地域での骨盤臓器脱修復手術の現状についての講演を予定しております。世界標準となる治療を我が国で確立していく気概を持つ皆様の、いつもの激烈討論を期待しております。時期的にも学会ポスターのような、中之島の川沿いをはじめとした各所で、ちょうど満開の桜で皆様をお迎えできるのではないかと期待しております。

ぜひ春の大阪に足をお運びいただきますようにお願い申し上げます。

第16回日本骨盤臓器脱手術学会学術集会
会長 竹村 昌彦
大阪急性期・総合医療センター 産科・婦人科 主任部長

会長 西尾 幸浩
大阪警察病院 産婦人科 顧問