第79回日本大腸肛門病学会学術集会

プログラム

  • 理事長講演
    「日本大腸肛門病学会の未来に向けて」
    司会 宮島 伸宜(松島病院大腸肛門病センター)
    演者 板橋 道朗(埼玉県済生会加須病院)
  • 会長講演
    「一つの手術がもたらした化学反応」
    司会 板橋 道朗(埼玉県済生会加須病院)
    演者 船橋 公彦(東邦大学医学部外科学講座一般・消化器外科学分野)
  • 特別講演
    「Believe in Dreams」
    司会 船橋 公彦(東邦大学医学部外科学講座一般・消化器外科学分野)
    演者 中田 久美(前女子バレーボール日本代表監督)
  • 教育講演1
    「大腸内視鏡検診への期待と精度管理の重要性」
    司会 松田 一夫(福井県健康管理協会県民健康センター)
    演者 小林 望(国立がん研究センター中央病院検診センター)
  • 教育講演2
    「症例とエビデンスから学ぶ大腸ESD:安全で確実な治療のコツ」
    司会 田中 信治(JA 尾道総合病院)
    演者 斎藤 豊(国立がん研究センター中央病院内視鏡科)
  • 教育講演3
    「周術期感染対策Up to Date」
    司会 小林 美奈子(日本医科大学武蔵小杉病院感染制御部)
    演者 大毛 宏喜(広島大学病院感染症科)
  • 教育講演4
    「肛門・直腸の性感染症」
    司会 岡本 欣也(JCHO 東京山手メディカルセンター大腸肛門病センター)
    演者 森 信好(聖路加国際病院感染症科)
  • 教育講演5
    「エキスパートに聞く,痔瘻の治療」
    司会 荒木 靖三(大腸肛門病センター高野会くるめ病院)
    演者5-1 EL5-1 多発痔瘻に対する手術
    佐原 力三郎(牧田総合病院)
    演者5-2 EL5-2 難治性痔瘻への対応
    下島 裕寛(松島病院大腸肛門病センター)
  • 教育講演6
    「ctDNA によるリキッドバイオプシーが変える大腸癌診療」
    司会 山田 岳史(日本医科大学消化器外科)
    演者 沖 英次(九州大学大学院消化器・総合外科)
  • 教育講演7
    「次世代につなぐ骨盤拡大手術のコツとピットフォール」
    司会 石原 聡一郎(東京大学医学部腫瘍外科・血管外科)
    演者 上原 圭(日本医科大学付属病院消化器外科)
  • 特別企画1
    「女性医師のキャリアアップ支援―今われわれになにができるか?―」
    司会 小林 美奈子(日本医科大学武蔵小杉病院感染制御部)
    山口 トキコ(マリーゴールドクリニック)
    演者 小澤 真由美(横浜市立大学消化器・腫瘍外科学)
    関口 久美子(日本医科大学武蔵小杉病院消化器外科)
    竹下 惠美子(獨協医科大学埼玉医療センター外科)
    野村 幸世(星薬科大学医療薬学研究室、東京大学医学部附属病院胃食道外科)
    林 奈那(広島生活習慣病・がん健診センター)
    松島 小百合(松島病院大腸肛門病センター)
  • 特別企画2
    「医師の働き方改革の現状と課題」
    司会兼演者 小山 信彌(日本私立医科大学協会)
    演者 馬場 秀夫(一般財団法人化学及血清療法研究所)
    藤川 葵(聖路加国際病院一般内科(元厚生労働省医政局医事課))
    望月 泉(八幡平市立病院)
  • Invited Lecture 1
    「Taiwan’s Journey of Combating Colorectal Cancer through Organized opulation Screening」
    司会 松田 尚久(東邦大学医学部内科学講座消化器内科学分野)
    演者 Han-Mo Chiu(Department of Internal Medicine, National Taiwan University Hospital,Taiwan ROC)
  • Invited Lecture 2
    「Robotic Surgery:Advancing Minimally Invasive Surgery for Colorectal Cancer」
    司会 竹政 伊知朗(大阪けいさつ病院)
    演者 George J. Chang(Professor and Chair ad interim , Department of Colon and Rectal Surgery Associate Vice President, Regional Surgery Strategy The University of Texas, MD Anderson Cancer Center)
  • Invited Lecture 3
    「Evolution of a Society Journal in Changing Times」
    司会 味村 俊樹(自治医科大学医学部外科学講座消化器一般移植外科学部門)
    演者 Susan Galandiuk(Department of Surgery, University of Louisville School of Medicine,USA)
  • ESCP Fellowship
    「A Comprehensive NCDB Analysis on Practice Trends and Outcomes of Right Colectomy for Colon Cancer in the United States」
    司会 Ichiro Takemasa(Osaka International Medical & Science Center)
    演者 Zoe Garoufalia(Ellen Leifer Shulman and Steven Shulman Digestive Disease Center, Department of Colorectal Surgery, Cleveland Clinic Florida, Weston, Florida, USA)
  • Asian Session 1
    「Prehabilitation & Perioperative Care for Colorectal Surgery」
    司会 Eiji Sunami(Kyorin University Hospital)
    Sung-Bum KANG(Seoul National University Hospital, Korea)
    演者 AS1-1:Shigenobu Emoto(The University of Tokyo)
    AS1-2:Ji Won PARK(Seoul National University Hospital and Seoul National University College of Medicine, Korea)
    AS1-3:Fumihiko Fujita(Kurume University School of Medicine)
    AS1-4:Jeonghyun Kang(Gangnam Severance Hospital, Yonsei University College of Medicine, Seoul, Korea)
  • Asian Session 2
    「Further developed surgical technique with new technology」
    司会 Shigeki Yamaguchi(Tokyo Women’s Medical University)
    Yoon Suk LEE(Seoul St. Mary Hospital, College of Medicine, The Catholic University of Korea)
    演者 AS2-1:Hidetoshi Katsuno(Fujita Health University, Okazaki Medical Center)
    AS2-2:Jung Hoon BAE(The Catholic University of Korea, Korea)
    AS2-3:Mamoru Uemura(Graduate School of Medicine, Osaka University)
    AS2-4:Jung-Wook HUH(Samsung Medical Center, Sungkyunkwan University School of Medicine)
  • 学会賞受賞記念講演
    司会 山本 聖一郎(東海大学消化器外科)
    「2024年受賞者POU5F1発現大腸癌細胞における治療抵抗性系譜の解析と標的化」
    演者 藤野 志季(Monash Health Dandenong Hospital Colorectal Surgery)
    「2023年受賞者大腸癌における新規標的遺伝子の同定と個別化医療の展望」
    演者 井上 彬(大阪急性期・総合医療センター消化器外科)

主題演題

  • シンポジウム1
    「炎症性腸疾患における炎症性発癌に対する診療アプローチ」
    司会 岩男 泰(慶應義塾大学医学部 予防医療センター)
    穂苅 量太(防衛医科大学校 消化器内科)
    司会の言葉

    炎症性腸疾患の長期罹患者は慢性炎症の持続を背景に炎症性発癌が問題となる。本邦でも長期罹患者が増加し、内科的加療の進歩に伴う外科治療の回避も相まって益々重要な問題になると認識されている。潰瘍性大腸炎では大腸癌、クローン病では大腸癌、小腸癌、肛門部癌が重要である。潰瘍性大腸炎に伴う大腸癌の場合、内視鏡的に同定しにくく診断が困難である。クローン病では肛門部癌、痔瘻癌はサーベイランス法も確立しておらず、進行して診断される場合も少なくない。治療において潰瘍性大腸炎では以前はhigh grade dysplasiaには大腸全摘術のみ行われてきたが、近年内視鏡的粘膜剥離術を施行する施設も増えてきた。しかし、術前診断や術後評価、治療後経過についての情報等、未解決なことが少なくない。本セッションでは、炎症性腸疾患における炎症性発癌に対する様々な問題点に対するアプローチを議論する場としたい。内科、外科双方からの多数の演題を募集する。

  • シンポジウム2
    「直腸癌に対するロボット支援手術:果たしてロボット支援手術は腹腔鏡を超えられるか?」
    司会 絹笠 祐介(東京科学大学 消化管外科学分野)
    花井 恒一(藤田医科大学 先端ロボット・内視鏡手術学)
    司会の言葉

    2018年に直腸癌に対するロボット支援手術が保険承認された以降、施設数、手術件数ともに大幅に増加している。また結腸癌に対するロボット支援手術も2022年に保険収載となり、最近では拡大手術への適応や若手の術者教育も盛んに論じられるようになった。一方でロボット支援手術のエビデンスの不足、加点がないことなど、ロボット支援手術の問題も未だ解決できていないことが多いが、近年は経験豊富な施設も増加し、様々な報告がされるようになった。本セッションでは、各施設での治療成績などをご提示頂き、ロボット支援手術で何がもたらされたのかをご討議いただきたい。

  • ビデオシンポジウム1
    「われわれの手技:横行結腸癌に対する腹腔鏡下手術」
    司会 的場 周一郎(虎の門病院 消化器外科)
    山口 茂樹(東京女子医科大学 消化器・一般外科)
    司会の言葉

    横行結腸癌に対する腹腔鏡手術、特にリンパ節郭清を伴う手術では血管解剖の理解、郭清範囲の決定、授動の範囲や手順、肝彎曲や脾弯曲の授動など、多くのピットフォールがあり難易度の高い手術と認識されている。また横行結腸はその部位によって隣接臓器や血管支配も異なるため攻略法も異なってくる。ここでは各施設における腹腔鏡下横行結腸切除術のアプローチ方法やリンパ節郭清・血管処理の工夫、膵周囲でのデバイスの選択や使用法の実際などについてビデオで提示いただく。また働き方改革の中で手術時間の短縮も大きなテーマである。腫瘍学的な成績とともに、不要な操作の省略や効率的な手順など手術時間短縮の試みについても提示いただきたい。

  • ビデオシンポジウム2
    「慢性裂肛、肛門狭窄に対する外科治療」
    司会 赤木 一成(辻仲病院柏の葉 肛門外科)
    宮田 美智也(医療法人愛知会 家田病院)
    司会の言葉

    裂肛は、硬便や下痢により生ずる単純な浅い裂創である急性裂肛から、慢性化に伴って炎症性変化が進行し、内括約筋層にまで達する難治性の肛門潰瘍に二次病変である肥大乳頭や見張り疣が加わり、さらに瘢痕性の狭窄をきたした慢性裂肛まで種々の病態がある。 裂肛の治療方針は、基本的には排便習慣、便の形状の改善と痔疾用外用薬の使用による保存的治療であるが、慢性裂肛や肛門狭窄に対しては外科治療が必要となる。しかし、特に肛門狭窄の診断には客観的な絶対的な基準値というものは無い。手術の目的は、内肛門括約筋の緊張・肛門狭窄の解除、二次病変の切除、炎症の除去あるいはドレナージであり、本邦での手術の選択肢には側方内肛門括約筋切開術、裂肛切除術、皮膚弁移動術などの肛門形成術、用指的拡張術がある。手術に踏み切るタイミングや術式の選択基準・適応、肛門狭窄の程度の診断、解除の程度をどのようにしているか。治療成績、術後の有害事象やその対策について御発表頂き、裂肛手術の治療成績向上につなげたい。

  • パネルディスカッション1
    「長期成績から見えてきた肛門近傍の下部直腸癌の術後排便機能障害とその対応」
    司会 幸田 圭史(帝京大学ちば総合医療センター 外科)
    西澤 祐吏(国立がん研究センター東病院 大腸外科)
    司会の言葉

    肛門近傍の下部直腸癌に対する治療法については、術前放射線化学療法の有無、肛門温存手術を選択するかどうか、側方郭清を行うかどうかなど、その選択肢は多岐にわたる。内外括約筋間直腸切除術(ISR)の発展と普及、あるいは吻合技術の向上等により、技術的にこれまで永久人工肛門の絶対適応と考えられる症例でも肛門温存が可能な場合も多くなった。しかし、それに伴い低位前方切除後症候群(LARS)と呼ばれる術後排便機能障害に悩まされる患者が増加しており、医療者として適切な対応が求められる。2020年の診療報酬改定では経肛門吻合を伴うISRが新設され、2024年の改定ではロボット支援下での適応拡大もなされ、肛門温存手技は今後もさらに普及すると考えられるが、治療予後と術後排便機能障害の状況を長期的視点から評価することが必要であろう。本セッションでは肛門温存手術のデメリットも把握した上で、適応や排便機能障害の診療について議論していただきたい。

  • パネルディスカッション2
    「大腸診療におけるAI活用の現況と課題」
    司会 金井 隆典(慶應義塾大学医学部 内科学(消化器))
    中村 真一(東京女子医科大学 消化器内科学分野)
    司会の言葉

    人間と同じような自然な会話ができるChatGPTをはじめ、AI技術は高度化し発展を見せている。日常診療の現場でも、今や診断や治療に欠かせないツールになりつつある。第78回に引き続き、大腸診療におけるAIの活用についてのテーマが採択された。前回のワークショップでは画像診断支援(検査画像、病理)、診断と治療支援(深達度診断、リンパ節転移予測、予後予測)、手術でのナビゲーションシステムに関する発表があった。医療分野におけるAIに関する最近の話題として、IC会話ロボット、機械学習の予後予測、スマートフォンの心電図診断、IoTによる服薬管理などが進行中である。本パネルディスカッションでは大腸診療を取り巻くAI技術の現状と今後の取り組みについて、広く演題を募集し討論したい。

  • パネルディスカッション3
    「腹腔鏡下/ロボット支援結腸切除術における体腔内吻合のfeasibility」
    司会 大塚 幸喜(藤田医科大学 先端ロボット・内視鏡手術学講座)
    長谷川 傑(福岡大学医学部 消化器外科)
    司会の言葉

    結腸切除後の体腔内吻合は、腸管受動範囲が少なくてすむ、術後の腸管機能回復までの期間が短い可能性が示され、体腔内吻合を行う施設が近年増えてきている。一方で、手技的な難しさ、また術後合併症や長期予後に関するデータが十分でないなどの懸念点もある。本パネルディスカッションでは、腹腔鏡・ロボット結腸切除後の体腔内吻合について、メリットのみならずデメリットの立場からも議論を進めてもらいたい。特に議論したい点に関しては、どんな症例に行うか(部位、肥満度、進行度)、どんな吻合方法(デルタ、overlap、FEEA)、また腸管内容の漏出防止に関する各施設の工夫も示してもらいたい。術後合併症や予後についてもデータを示していただけると議論が深まると思います。これにより、体腔内吻合の臨床的有用性と適用範囲を明確にすることができ、手術手技の向上や患者さんのアウトカム改善に繋がることを期待する。

  • パネルディスカッション4
    「閉塞性大腸癌の治療成績と課題」
    司会 斉田 芳久(東邦大学医療センター大橋病院 外科)
    山本 聖一郎(東海大学医学部 消化器外科)
    司会の言葉

    閉塞性大腸癌は日常診療で頻繁に遭遇し、がん治療における緊急性が高い事象の一つで、閉塞性大腸炎、穿孔など重篤な病態になる可能性がありますが、近年は大腸ステントを中心に、外科手術ではない腸管減圧法の進化・普及により治療成績は非常に改善しています。しかし、腸管減圧方法だけでなく、減圧期間や減圧後の化学療法や外科手術を含む集学的治療の選択や順序など、検討しなければいけない課題は多くあります。また短期だけでなく長期の予後に対する減圧法の影響もいまだ明確ではありません。本パネルでは、緩和目的またはbridge to surgeryを問わず、各々の治療成績とともに課題解決に向けた研究をご発表いただき、閉塞性大腸癌の治療の進化および確立の一助になるディスカッションをしたいと思います。

  • パネルディスカッション5
    「大腸T1癌の診断と治療戦略」
    司会 池松 弘朗(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター)
    橋口 陽二郎(大森赤十字病院 外科)
    司会の言葉

    内視鏡診断学の進歩に伴い、リンパ節転移高リスク因子の1つであるT1b癌を高い正診率にて診断することが可能になった。しかし、他のリスク因子である脈管侵襲や簇出は、内視鏡診断することができないため、またリスク因子がT1b癌のみの症例ではリンパ節転移のリスクが低いとの報告もあり、内視鏡切除を先行し、病理組織学所見により追加外科的切除を判断する戦略の議論もされている。さらに内視鏡切除の適応拡大に向けて、AI やLiquid Biopsyによる新たなリスク検討も報告されている。本パネルディスカッションでは、大腸T1癌の診断,治療の現状を総括することで解決すべき問題点を明らかにし、その解決策や新たな治療戦略に関して議論したい。そこで、T1癌の診断、治療方針の現状、内視鏡的・外科的治療の長期成績だけでなく、内視鏡切除の適応拡大の可能性,新しい治療法(PAEM,LECS,全層切除など)、新たな治療戦略の提唱などの演題を期待する。

  • パネルディスカッション6
    「炎症性腸疾患診療における内科と外科の連携」
    司会 池内 浩基(兵庫医科大学 炎症性腸疾患外科)
    小林 拓(北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター)
    司会の言葉

    本パネルディスカッションでは、炎症性腸疾患診療における内科と外科の連携について議論いたします。内科と外科が緊密に連携して、炎症性腸疾患患者の診療にあたることは、患者の治療成績やQOLにおいて時として薬剤の効果や外科医の技術を越えた大きなインパクトをもたらします。この重要なテーマに関する皆様の研究や臨床経験をもとに活発な議論を行いたいと考えております。 具体的な演題としては、① 内科と外科の連携体制の整備、②手術率や術後再発予防に焦点を当てた内科治療成績の解析、③ 潰瘍性大腸炎緊急手術と待機手術の比較、④ 高齢潰瘍性大腸炎患者における外科手術判断基準、⑤ クローン病瘻孔症例における手術タイミング、⑥ クローン病狭窄症例に対する治療法(特に外科手術と内視鏡的拡張術の比較)、⑦クローン病術後腸管の評価、などが想定されますが、これらに限定せず幅広い視点からの演題を期待します。

  • パネルディスカッション7
    「再発直腸癌の治療戦略:放射線治療・外科治療・薬物治療か?」
    司会 伊藤 雅昭(国立がん研究センター東病院 大腸外科)
    植竹 宏之(独立行政法人国立病院機構 災害医療センター 臨床研究部)
    司会の言葉

    直腸癌に対する外科治療は結腸癌と比較して十分な切除マージンを確保することが難しく術後局所再発は高い。また直腸癌術後の遠隔転移は、肝転移よりもむしろ高率に肺転移を起こしやすいことも知られている。再発直腸癌は再発形式により治療戦略は異なるので局所再発と遠隔再発に分けて治療戦略を論じる必要があるだろう。特に直腸癌局所再発は切除しない場合には骨盤内膿瘍や痛みを伴いQOLを大きく損ねる。一方で外科治療は根治の可能性はあるものの、再々発のリスクも少なくなく、かつ大きな侵襲を伴う治療方法でありかつ臓器温存も厳しい。したがってその治療戦略は外科医や施設の間でもその一定の結論はいまだ確立されていない。また肝転移や肺転移などの血行性転移においても化学療法との適切な組み合わせにより効果的な治療成績を求める研究もすすんでいる。本セッションでは再発直腸癌に対する外科治療、化学療法さらには放射線治療を含んだ幅広い治療戦略の可能性について論じていただきたい。

  • パネルディスカッション8
    「腹膜播種を伴うStage IV大腸癌の治療戦略」
    司会 五井 孝憲(福井大学 第一外科)
    小林 宏寿(帝京大学医学部附属溝口病院 外科)
    司会の言葉

    腹膜播種を伴う大腸癌は、大腸癌取扱い規約においてStage IVcに分類され予後不良である。世界的には減量手術+腹腔内温熱化学療法が一部の専門施設にて行われているが、本邦では保険収載されていないこともあり、あまり普及していない。大腸癌治療ガイドラインではP1,P2症例に対する切除は推奨されるものの、P3症例については推奨される治療法が記載されていない状況であり、P3症例に対しては全身化学療法を行う施設が多いのが実情である。このような本邦における現状の下、各施設にて行われている治療法およびその治療成績を提示していただき、今後の治療成績向上の一助となることを期待したい。また、術前診断率が低いことも大腸癌腹膜播種の特徴であり、診断能向上に資するmodalityや予後指標となる腹膜播種分類についても検討していただきたい。

  • パネルディスカッション9
    「難治性炎症性腸疾患に対する治療の進歩」
    司会 江﨑 幹宏(佐賀大学医学部 消化器内科)
    松岡 克善(東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科)
    司会の言葉

    炎症性腸疾患の診療環境は近年急激な変化を遂げている。まず、炎症性腸疾患の国内での患者数は急増し、30万人を超えるまでになった。さらに、新規の分子標的治療薬が毎年のように次々と登場し、治療選択肢が多様化してきている。そして、粘膜治癒を治療標的としたtreat-to-targetアプローチが、炎症性腸疾患に対する基本的な治療戦略として、臨床現場に広く取り入れられてきている。一方で、種々の治療薬に反応しない難治性炎症性腸疾患の患者も依然として多くいるのが実状であり、炎症性腸疾患の治療における大きな課題として残っている。このパネルディスカッションでは、難治性炎症性腸疾患の治療に焦点を当て、内科的治療の最適化、工夫、さらには外科的治療も含めた最新のエビデンスについて議論したいと考えている。

  • ビデオパネルディスカッション1
    「Ⅲ型、Ⅳ型痔瘻に対する手術」
    司会 栗原 浩幸(所沢肛門病院)
    辻 順行(社会医療法人社団高野会 大腸肛門病センター高野病院)
    司会の言葉

    III型痔瘻とは坐骨直腸窩痔瘻、IV型痔瘻は骨盤直腸窩痔瘻のことである。これらの痔瘻を根治させることはなかなか難しく、手術により機能障害をきたす可能性もある。肛門科医にとって醍醐味の領域である。手術するにあたっては、術者が正確な解剖学的知識と病態認識を持つことが不可欠である。その上で根治させるためには、どの部分を処理することが必要であるかを理解して手術を行わなければならない。手術のアプローチには正中からのもの、側方からのもの、原発口からのものなどがあるが、それぞれ術者が根治と機能温存を考慮してのアプローチであると考えられる。本セッションでは、各施設で考えるIII型IV型痔瘻の病態を述べていただき、それに対してどのようなアプローチで手術を行うか、根治のためには何が必要であるか、術後成績について述べていただきたい。明日からの臨床に役に立つセッションとなることを希望する。

  • ビデオパネルディスカッション2
    「われわれの手技:合併症低減に向けたストーマ造設手技と合併症に対する外科的対応(主に緊急手術時、傍ストーマヘルニア、ストーマ脱)」
    司会 衛藤 謙(東京慈恵会医科大学 外科学講座)
    遠藤 俊吾(福島県立医科大学 会津医療センター 大腸肛門外科)
    司会の言葉

    良いストーマとは、ストーマに関連する合併症がなく、セルフケアを含めた管理しやすいストーマと考えます。管理困難なストーマの多くが粘膜皮膚離開、創感染、造設位置やストーマ高に起因するとされることから、本セッションでは、各施設で行っている緊急手術例などストーマ造設が困難な状況下における合併症の少ない造設手技、開腹創(ポートサイトを含む)とストーマサイトの位置関係などを提示していただきたい。また、ストーマ合併症の中でも、外科治療の適応となることが多い傍ストーマヘルニア、ストーマ脱を中心に、ストーマ合併症に対する手術手技と、その発生頻度や治療成績をご提示いただき、ストーマ管理について議論したいと考えます。永久ストーマと一時的ストーマは問いませんが、それぞれの問題点が明らかにできる提示を望みます。

  • ビデオパネルディスカッション3
    「下部消化管緊急症例に対する低侵襲治療」
    司会 坂本 一博(順天堂大学 下部消化管外科)
    平田 敬治(産業医科大学 第1外科)
    司会の言葉

    下部消化管(小腸~大腸)に対する内視鏡治療・IVR・MIS(Minimally Invasive Surgery)などの低侵襲治療が、治療後のQOLの面からも広く行われている。一方で、急性腹症をはじめとした緊急対応症例では、早急・的確な診断と速やかな治療が必要で、待機的治療と同等に導入できない場合もある。本セッションでは、出血・閉塞・穿孔など多種多様な下部消化管緊急症例に対して積極的に低侵襲治療を行っている施設(内科・放射線科・外科)から、その手技の適応・特徴や注意点についてビデオ提示を含めて報告いただきたい。その上で、各治療の妥当性ならびに治療成績向上のための工夫について議論を深めたい。

  • ビデオパネルディスカッション4
    「直腸脱に対する経肛門的アプローチの適応と限界」
    司会 梅枝 覚(JCHO四日市羽津医療センター 外科大腸肛門病・IBDセンター)
    栗原 聰元(東邦大学医療センター大森病院 消化器外科)
    司会の言葉

    高齢の女性が多く罹患する直腸脱は、脱出に伴う出血、疼痛、便失禁などの症状で患者のQOLを著しく低下させる。手術が唯一の治療法で、経腹的アプローチと経肛門的アプローチに大別される。経腹的アプローチとして代表的な腹腔鏡下直腸固定術は根治性が高く広く行われているが、高齢者にとっては侵襲が大きく合併症も多いことが問題である。一方、Gant-三輪-Thiersch法、Delorme法、Altemeier法を代表とした経肛門的アプローチは、高齢者にとって侵襲が少なく安全性も高い。経肛門的アプローチは、根治性が低いと言われてきたが、さまざまな工夫がされてきており、根治性の高い術式も行われるようになってきている。術後の肛門機能に対するリハビリも行われるようになってきている。今後ますます高齢者が増える中では、より安全で根治性の高い術式が求められる。このセッションでは各施設における経肛門的直腸脱手術の適応と限界について、その道のエキスパートに手術の動画を供覧し、論じて頂きたい。

  • ビデオパネルディスカッション5
    「ⅡL型痔瘻の細分類と治療戦略」
    司会 安部 達也(医療法人健康会 くにもと病院 肛門外科)
    田中 良明(寺田病院 大腸肛門病センター)
    司会の言葉

    痔瘻診療では正確な病態とくに病型の診断が重要である。瘻管の走行と直腸肛門管の解剖学的構造による間隙(space)との位置関係で分類するGoligherやParksの分類などがあるが、本邦ではその部位や複雑さを記号化した隅越らの分類(以後隅越分類)が広く用いられている。最も頻度の高い低位筋間型(以下ⅡL型)は瘻管走行が単純なⅡLs型と複雑なⅡLc型に分類され、痔核・裂肛に比し難しいとされる痔瘻診断を肛門診療経験の浅い医師にも理解しやすいよう配慮にも優れた分類である。一方ⅡLc型はⅡLs以外の“単純でない曖昧な複雑さ”でもあり、いわゆる“枝分かれのレベル”“より正確な複雑さ“に準じた術式を適応すべき症例も経験する。よって2つの病型にとどまらず詳細な病態を識別することでⅡL型治療の向上につながるであろう。
    坐骨直腸窩型(Ⅲ型)進展の解析による新分類の貴重な報告がなされる今日こそ、ⅡL型に対しても豊富な診療経験や各画像診断などによる細分類、術式手技VD供覧などによる治療方針を大いに柔軟に述べていただき、あらためて隅越分類にも敬意を払うセッションとしたい。 (一部指定)

  • ワークショップ1
    「大腸腫瘍に対する最適な内視鏡的切除法の選択」
    司会 岡 志郎(広島大学大学院医系科学研究科 消化器内科学)
    小林 清典(医療法人恵仁会松島病院 大腸肛門病センター)
    司会の言葉

    大腸腫瘍に対する内視鏡切除手技は、機器およびデバイスの開発・改良とともに、ポリペクトミー、EMR、ESDなどの各段階を経て進歩し、手技の標準化とともに本邦で広く施行されている。最近では新たな内視鏡切除手技としてコールド・ポリペクトミーや浸水下内視鏡的粘膜切除術(UEMR)、ESDとEMR両者の利点を活かしたハイブリッドESDやプレカッティングEMRなども普及しつつある。さらには適応に条件はあるものの腹腔鏡・内視鏡合同局所切除(LECS)による全層切除も視野に入りつつある。一方で、これらの切除法選択に際しては、病変の大きさや形態、局在、術前の質的診断、術者の技量などを総合的に判断する必要がある。本ワークショップでは、大腸腫瘍に対する最適な内視鏡切除法の選択について、各切除手技の特徴、根治性、経済性、安全性など多方面の観点から改めて議論したい。多数の演題応募を期待する。

  • ワークショップ2
    「炎症性腸疾患に対する低侵襲手術」
    司会 小金井 一隆(横浜市立市民病院 炎症性腸疾患センター)
    問山 裕二(三重大学 消化管・小児外科)
    司会の言葉

    2023年に公表された内視鏡外科診療ガイドラインでは、「炎症性腸疾患における腹腔鏡手術の有用性に関するClinical Question」に対して、腹腔鏡手術が開腹手術に比べて術後の短期成績を改善できる可能性があり、その実施を弱く推奨している。他方で、最新の潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針では、腹腔鏡下手術や小開腹による低侵襲手術は、整容性の点で優れているが、重症で腸管が脆弱あるいは全身状態が不良な症例に対しては低侵襲手術や術式の適応を慎重に考慮すべきであり、専門施設で行うことが望ましいと記載されている。
    炎症による組織変性や複数回手術による高度癒着がある中で、機能温存を重視した高度な技術が必要となる炎症性腸疾患に対する低侵襲手術は、病態に精通し熟練した手術技術のある施設での実施が現状では適切と考えられる。本ワークショップでは、専門施設を含め各施設の炎症性腸疾患に対する低侵襲手術の取り組みとその成績を発表いただき、そこから見える本疾患に対する低侵襲手術の将来進むべき展望について議論したい。

  • ワークショップ3
    「クローン病に合併する痔瘻の診断と治療」
    司会 岡本 康介(松島病院 大腸肛門病センター)
    吉川 周作(社会医療法人健生会 土庫病院)
    司会の言葉

    痔瘻を合併したクローン病患者はQOLが損なわれることが多いのは周知のことであり、この問題は大量の腸切除後の短小腸症候群とあわせてクローン病に残された最後の課題とさえ言われている。一方で、腸病変に対しては新しく免疫調節薬が次々に保険承認され、腸病変が安定する患者が増えている。また痔瘻に対しては新たに再生医療による治療も加わり、肛門病変に対する治療方針も大きく変わってきている。 今回のワークショップでは、
    1:診断について
    近年MRI、CT、肛門エコーなどの普及により画像診断能力は飛躍的に発達した。痔瘻の診断にも広く応用が可能で適切な治療選択に大いに貢献しているものと思われる。治療効果に照準をあてて、これらの診断ツールの有効性や使用方法などを論じたい。
    2:痔瘻合併クローン病の治療・手術について
    痔瘻には従来からseton法が一般的に行われているが、挿入方法、材質、抜去や入れ替えを含めた維持、管理方法などのほか、免疫調節薬(IM、バイオ、JAC)の使用で管理方法が変わったのか、痔瘻に対しての根治手術はどこまで可能か、そして再生医療の分野での使用経験から適応例などを討論したい。
    上記の論点から現状での本病態の診断と治療方法の到達点と今後の展望を論じていただきたい。

  • ビデオワークショップ1
    「痔核の治療困難例に対する手術(巨大痔核、全周性痔核など)」
    司会 松尾 恵五(医療法人社団康喜会 東葛辻仲病院)
    八子 直樹(医療法人桜樹会 八子医院 外科)
    司会の言葉

    「痔核の治療困難例に対する手術」とは
    巨大痔核、全周性痔核、嵌頓痔核などの痔核自体の病態が重症で手術治療の難易度が高いものと、 肛門の併存疾患(複雑痔瘻や肛門狭窄をきたした裂肛など)のため痔核手術が制限されるもの、 肛門に対する前治療(ALTA注射療法、ホワイトヘッド手術など)のため通常の痔核手術が困難なもの、全身の合併疾患のため出血傾向や易感染性などに配慮した高度の技術を要する手術 などに分けて考えられる。
    また、術後経過においても術後出血や肛門狭窄をきたさないための工夫、全身の術後合併症を防止する方策などを考慮することが求められる。
    本ビデオワークショップにおいては新奇性に富んだ手法のみならず肛門手術を行う外科医師に実践的に役立つ手術方法を紹介していただける発表を期待している。

  • ビデオワークショップ2
    「結腸癌に対するロボット支援手術の現状と課題」
    司会 猪股 雅史(大分大学医学部 消化器・小児外科学講座)
    福長 洋介(関西医科大学総合医療センター 消化管外科学講座)
    司会の言葉

    2022年4月、直腸癌に加えて結腸癌に対するロボット支援手術も保険適応となり、結腸癌ロボット支援手術は急速普及してきている。腹腔鏡手術で難易度が高いとされるSurgical trunkの郭清や中結腸動脈周囲の郭清、左側横行結腸癌手術や下行結腸癌手術への活用が進められている一方、ポート配置、アプローチ法、吻合方法などは施設によって異なっており、標準化には程遠い状況である。本セッションでは、各施設の結腸癌に対するロボット支援手術の短期成績など現状を報告していただくとともに、その手技のピットホールや工夫について、ビデオ供覧を通じて論じて頂きたい。

  • ビデオワークショップ3
    「直腸脱の経腹的手術アプローチのKnack & Pitfalls」
    司会 野明 俊裕(大腸肛門病センター高野会 くるめ病院)
    山名 哲郎(JCHO東京山手メディカルセンター 大腸肛門病センター)
    司会の言葉

    直腸脱は高齢女性に多く見られ便失禁や便秘を伴い超高齢化社会を迎えた現代では遭遇する機会が増加している。直腸脱の治療には様々なアプローチがあり多くの術式が各施設の特徴に応じて採用されている。直腸固定術もその中の一つであるがその低侵襲性と再発率の低さから全身麻酔可能な症例においては第一選択とされている場合が多い。しかしながら一言で直腸固定術といっても、開腹、腹腔鏡、ロボットを用いるアプローチや直腸の剥離を前方や後方のみの剥離にとどめるのか全周性に剥離するのか、メッシュの使用の有無、S状結腸切除を行うかどうかなど多くの選択肢が存在する。
    今回は各施設の手術選択基準やその治療成績、手術を行う上での要点や手術をスムースに進めるためのコツ、また陥りやすい解剖学的理解の誤り、起こりやすい副損傷などを示していただき学会として直腸脱治療成績の向上につながるような討論を行いたい。会員各位の積極的な演題応募をお願いする。