第3回 内視鏡的全層切除・縫合法研究会(報告)

第3回内視鏡的全層切除・縫合法研究会が、2021年12月26日(日)に完全WEB方式で開催され、盛会裡に終了したことをご報告いたします。お蔭様で164名の方々にご参加いただき、当番世話人、事務局よりご参加および研究会成功にご尽力いただいた皆様に心から重ねて御礼申し上げます。会の運営に際しましては不行き届きの点も多々あったことと存じますが、何卒ご容赦頂きますようお願い申し上げます。末筆ながら、皆様方の益々のご健康とご活躍をお祈り申し上げます。

当番世話人

矢作 直久
慶應義塾大学医学部 腫瘍センター

当番世話人挨拶

 ESDの登場を機に消化管腫瘍に対する内視鏡低侵襲治療は大きく様変わりし、不確実で姑息的な治療法から確実で根治的な治療法へと変貌を遂げました。更にPOEMに代表される粘膜下層内視鏡関連手技の登場により、内視鏡低侵襲治療の可能性が飛躍的に拡大してきています。現在ではほぼ標準的になったESDも、少なくともその黎明期である20余年前には多くの消化器内科医や消化器外科医から危険極まりない手技と見做されていました。しかし、様々なノウハウの積み重ねや処置具の開発・改良に伴い、適切に出血や穿孔に対して対処できるようになり、ESDは安全かつ確実な手技に様変わりしました。
 一方、米国では日本人ほど器用ではない術者がいきなり大腸の難しい症例のESDを行ったため、穿孔の頻度が高く問題視されましたが、NOTESのスピンオフプロダクトとして作製されたOverstichを用いて創部全体を完全縫縮することによりトラブルを回避できることを見出し、ルーティンで縫縮する施設が出てきました。これが術後の偶発症を劇的に減らし、結果としてDay surgeryとしてESDが実施できる状況となりました。不完全切除であった場合に腫瘍を縫い込んでしまうと問題点はありますが、Day surgeryという新たな潮流を感じさせます。一方で、SMTの切除においては、日本では管腔の内外を交通させることを回避する方法を追求している最中に、中国ではESDと同様の方法で切除して穴が空いたら閉じれば良いという単純な発想でSMTの治療を進め、全層切除しても完全に縫縮してしまえば問題ないということを示しました。これも当初は苦笑いしながら見ていいたものが、比較的安全に実施でき腫瘍も確実に切除できることが示された訳です。日本でも既に胃GISTに対する内視鏡的全層切除術が先進医療として実施されていますが、本邦のデータで安全性と確実性を示す必要があります。
 今回のテーマは安全かつ確実な手技の工夫にフォーカスしたものになっております。いつの時代も新たな治療手技はチャレンジングなものですが、普及の際には安全性と確実性が求められます。より良い内視鏡低侵襲医療を実現するためにも、先生方の日々の研究や臨床の成果を是非持ち寄って活発な議論をお願いしたいと思っております。多くのみなさまの参加をお待ちしております。

第3回内視鏡的全層切除・縫合法研究会 当番世話人

矢作 直久

日時 2021年12月26日(日) WEB開催

最優秀演題賞


Ⅱー03 胃粘膜下腫瘍に対する内視鏡的全層切除術の工夫 “Balloon occlusion method”

福田 舞先生(昭和大学江東豊洲病院 消化器センター)

プログラム

【開会挨拶 - 当番世話人挨拶】 10:00 - 10:05
矢作 直久(慶應義塾大学医学部 腫瘍センター)
【一般演題 SessionⅠ】 10:05 - 10:45
司会: 井上 晴洋(昭和大学江東豊洲病院 消化器センター)
阿部 展次(杏林大学医学部 消化器・一般外科)
  • Ⅰ-01:胃粘膜下腫瘍治療におけるEMD、ESSDとEFTRの位置づけ
    年森 明子 (昭和大学江東豊洲病院 消化器センター)
  • Ⅰ-02:当院における胃SMTに対する治療の経験
    桑原 洋紀 (大森赤十字病院 消化器内科)
  • Ⅰ-03:当院での3cm以下の胃GISTに対する内視鏡治療成績
    港 洋平 (NTT東日本関東病院 消化器内科)
  • Ⅰ-04:当院での胃GISTに対する内視鏡的全層切除術のクリニカルパスの作成
    櫻井 裕久 (大阪国際がんセンター 消化器内科)
【一般演題 SessionⅡ】 10:45 - 11:25
司会: 矢作 直久(慶應義塾大学医学部 腫瘍センター)
上堂 文也(大阪国際がんセンター 消化管内科)
  • Ⅱ-01:胃GIMTに対する内視鏡的切除術の治療困難性の検討
    澤田 敦史 (横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター)
  • Ⅱ-02:内視鏡的消化管全層切除術におけるカウンタートラクションデバイスの使用経験
    樺 俊介 (東京慈恵会医科大学 内視鏡医学講座)
  • Ⅱ-03:胃粘膜下腫瘍に対する内視鏡的全層切除術の工夫 “Balloon occlusion method”
    福田 舞 (昭和大学江東豊洲病院 消化器センター)
  • Ⅱ-04:管外発育型胃粘膜下腫瘍に対する内視鏡的全層切除術の工夫 “Double Scope法” 
    島村 勇人 (昭和大学江東豊洲病院 消化器センター)
【一般演題 SessionⅢ】 11:25 - 12:15
司会: 良沢 昭銘(埼玉医科大学国際医療センター 消化器内科)
炭山 和毅(東京慈恵会医科大学 内視鏡医学講座)
  • Ⅲ-01:内視鏡的全層縫合法における手技別縫合強度の比較:自動牽引とリークテストによるex vivo試験
    松井 崇矩 (香川大学医学部消化器・神経内科)
  • Ⅲ-02:内視鏡的手縫い縫合法を用いたEFTRの臨床経験
    小泉 英里子 (日本医科大学付属病院 消化器内科)
  • Ⅲ-03:トラクション併用下胃壁全層切除およびEndoscopic Ligation with O-ring Closure
    (E-LOC)+OTSCによる全層内反縫合の臨床導入
    岩崎 丈紘 (高知赤十字病院 消化器内科)
  • Ⅲ-04:支持縫合を用いた内視鏡的全層連続縫合法
    (EFT-Continuous Suturing with Stay-suture: EFT-CSS)の開発
    上里 昌也 (千葉大学医学部 先端応用外科学)
  • Ⅲ-05:消化管分野における全層閉鎖を目指した軟性内視鏡用小型ステープラの開発
    野中 哲 (国立がん研究センター中央病院 内視鏡科)
【Special session】 12:15 - 12:55
「内視鏡的手縫い縫合法 ―有効性と手技のコツ―」
司会: 後藤 修(日本医科大学付属病院 消化器・肝臓内科)
演者: 飽本 哲兵(日本医科大学千葉北総病院 消化器内科)
(共催:オリンパス株式会社)
【一般演題 SessionⅣ】 13:00 - 13:40
司会: 豊永 高史(神戸大学医学部附属病院 光学医療診療部)
斎藤 豊(国立がん研究センター中央病院 内視鏡科)
  • Ⅳ-01:胃ESD術中大穿孔に対するトラブルシューティング
    Endoscopic Ligation with O-ring Closure (E-LOC) の有用性
    谷内田 達夫 (香川大学医学部附属病院 総合内科)
  • Ⅳ-02:ディスポーザブル留置スネアと高剛性シーススネアを用いた巾着縫合術
    小林 真 (市立四日市病院 消化器内科)
  • Ⅳ-03:内視鏡的手縫い縫合法にて閉鎖した胃ESD後粘膜欠損部の経時的変化に関する検討
    樋口 和寿 (日本医科大学 消化器内科学)
  • Ⅳ-04:50mm以上の胃ESD後粘膜欠損に対する閉鎖術:Reopenable-clip Over the Line Method
    野村 達磨 (伊勢赤十字病院 消化器内科)
【一般演題 SessionⅤ】 13:40 - 14:20
司会: 山本 博徳(自治医科大学 内科学講座)
糸井 隆夫(東京医科大学 消化器内科)
  • Ⅴ-01:胆膵内視鏡による消化管穿孔に対するOver-The-Scope Clipの有用性
    藤田 曜 (埼玉医科大学国際医療センター 消化器内科)
  • Ⅴ-02:Over-The-Scope Clip: OTSCが有効であった十二指腸腺腫術中穿孔の1例
    青柳 裕之 (福井県立病院 消化器内科)
  • Ⅴ-03:十二指腸神経内分泌腫瘍に対してD-LECSを施行した1例
    村松 孝洋 (東京医科大学病院 消化器内科)
  • Ⅴ-04:広周在性十二指腸ESDにおける粘膜欠損縫縮の検討
    窪澤 陽子 (慶應義塾大学医学部 腫瘍センター低侵襲療法研究開発部門)
【一般演題 SessionⅥ】 14:20 - 15:00
司会: 田中 信治(広島大学大学院 医系科学研究科 内視鏡医学)
塩飽 洋生(福岡大学医学部 消化器外科)
  • Ⅵ-01:大腸ESDにおけるLoop9による粘膜閉鎖の臨床成績と最新の工夫
    田邊 万葉 (昭和大学江東豊洲病院 消化器センター)
  • Ⅵ-02:食道横隔膜上憩室に対する経口内視鏡的憩室切除術2例の経験から
    西川 洋平 (昭和大学江東豊洲病院 消化器センター)
  • Ⅵ-03:当院における咽頭食道憩室に対する経口内視鏡的憩室中隔筋層切開術
    Zenker’s diverticulum per-oral endoscopy myotomy: Z-POEMの治療経験
    田中 仁 (昭和大学江東豊洲病院 消化器センター)
  • Ⅵ-04:Pure NOTESとしてのPOEFの臨床成績
    年森 明子 (昭和大学江東豊洲病院 消化器センター)
【Afternoon session】 15:00 - 15:30
「ゼオスーチャーMの活用と縫合器の今後の展望」
司会: 小野 裕之(静岡県立静岡がんセンター 内視鏡科)
演者: 森 宏仁(愛媛労災病院 消化器病センター)
(共催:ゼオンメディカル株式会社)
【閉会挨拶 - 次回当番世話人挨拶】 15:30 - 15:35
山本 博徳(自治医科大学 内科学講座)

【第3回内視鏡的全層切除・縫合法研究会協賛企業】

株式会社アムコ
株式会社ウイン・インターナショナル
オリンパスマーケティング株式会社
株式会社カネカメディックス
ゼオンメディカル株式会社
ゼリア新薬工業株式会社
第一三共株式会社
武田薬品工業株式会社
富士フイルムメディカル株式会社
ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社
(あいうえお順)

第3回内視鏡的全層切除・縫合法研究会の開催に際し、上記の企業の多大なるご援助をいただきました。ここに厚く御礼申し上げます。

2021年12月

第3回内視鏡的全層切除・縫合法研究会 当番世話人
慶應義塾大学医学部 腫瘍センター

教授 矢作 直久