第7回 内視鏡的全層切除・縫合法研究会(報告)

第7回内視鏡的全層切除・縫合法研究会が、2025年12月20日(土)に開催され、盛会裡に終了したことをご報告いたします。お蔭様で多くの方々に現地参加頂き、当番世話人、事務局よりご参加および研究会成功にご尽力いただいた皆様に心から重ねて御礼申し上げます。会の運営に際しましては不行き届きの点も多々あったことと存じますが、何卒ご容赦頂きますようお願い申し上げます。末筆ながら、皆様方の益々のご健康とご活躍をお祈り申し上げます。

当番世話人

豊永 高史
神戸大学大学院 消化器内科学分野

当番世話人挨拶

 「第7回内視鏡的全層切除・縫合法研究会」の当番世話人を担当させて頂くことになりました、神戸大学大学院消化器内科学分野の豊永高史です。ご推薦頂きました井上晴洋代表世話人、世話人・監事の皆さまに厚く御礼申し上げます。

 本研究会は、海外における全層切除・縫合法の目覚ましい普及に対し、後塵を拝する本邦の状況を危惧された、井上代表世話人の発案で2019年末に始まった研究会です。過去6回にわたる発表や議論の内容は本当に素晴らしく、本邦の医療環境に即した独自の発展に寄与していると感じています。

 海外ではNOTESへの取り組みを背景に様々なデバイスや手技が開発され、内視鏡治療はFlexible endoscopic surgeryとして進化してきました。Suturing deviceを用いたEndoscopic sleeve gastroplastyやERTRなどはその代表と言えます。ESDもFlexible endoscopic surgeryの一部に過ぎず、大がかりなデバイスを駆使したDevice associated ESDが主流です。しかし、デバイスの多くは高額であり、本邦では未だ使用出来ない物が殆どです。また、肥満治療がその多くを占めるなど、本邦とはかなり異なった状況にあります。

 一方、クリップや糸、ゴムバンドなど、比較的安価なデバイスを用いても、工夫次第では大がかりなデバイスと同等ないしそれ以上の効果を引き出すことも可能と思われます。加えて、高額な医療機器に依存する診療体系では日本の医療制度は崩壊しかねません。混合診療などの到来を見据え、希望を持って新たな機器開発を行うことも必要ですが、費用を負担できない患者は置きざりになっていく可能性もあります。ここは、隣の芝生をうらやむより、本邦の実状にあった持続可能な全層切除・縫合法を探求していくべきではないでしょうか。診断から治療、術後管理まで、本邦の繊細かつ大胆な内視鏡界が役割を果たし、引き続き世界をリードしていく事を期待しています。もちろん、高額な機器の使用経験や機器開発などの演題も歓迎します。

 先生がたにとって、神戸はJDDW等で毎年の様にお越しになる目新しさのない街と拝察いたしますが、クリスマスシーズンの当地はそれなりに良い雰囲気を醸し出しています。近くには有馬温泉もございますので、研究会前後に一年の疲れも癒やして頂けるのではと拝察いたします。皆さまのご応募、ご参加を心よりお待ちしています。

第7回内視鏡的全層切除・縫合法研究会 当番世話人

豊永 高史

会期 2025年12月20日(土)
会場 神緑会館記念ホール(神戸大学医学部福利厚生施設 4階)
テーマ 持続可能な内視鏡的全層切除・縫合法の探求

最優秀演題賞


Ⅵ-01 外付けチャンネルを活用した可動式 Dual-channel 内視鏡(DAICE)による巨大大腸穿孔閉鎖の1例

昭和医科大学江東豊洲病院 消化器センター 角 一弥

プログラム

【開会挨拶】9:10 - 9:15

代表世話人:昭和医科大学江東豊洲病院 消化器センター 井上 晴洋

当番世話人:神戸大学大学院 消化器内科学分野 豊永 高史

【一般演題 SessionⅠ】(食道・ARMS関連/9:15 - 10:05)

司会:昭和医科大学江東豊洲病院 消化器センター 井上 晴洋

福岡大学医学部 消化器外科 塩飽 洋生

  • Ⅰ-01:経口内視鏡的筋層切開術におけるエントリー閉鎖難渋症例に対する創閉鎖法

    神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野 阿部 洋文

  • Ⅰ-02:内視鏡的静脈瘤硬化療法中に生じた大型の食道裂創に対しClip with Line Pulley Securing(CLiPS)を用いた縫縮経験

    板橋中央総合病院 消化器病センター 古賀 大輝

  • Ⅰ-03:スネアシースの先端を切ることで安全に施行可能だったARMS後潰瘍底の内視鏡的止血

    昭和医科大学江東豊洲病院 消化器センター 重田 浩平

  • Ⅰ-04:Angle Booster II

    Showa Medical University Koto Toyosu Hospital Nikko Theodore V. Raymundo

  • Ⅰ-05:胃GISTに対するST-EFTRの治療成績と腔虚脱への新規対応策:UPLE法の提案

    福岡大学 消化器外科 塩飽 洋生

  • Ⅰ-06:難治性逆流性食道炎に対する内視鏡的縫合結紮噴門形成術の安全性と短期成績

    愛媛大学大学院医学系研究科 消化器・内分泌・代謝内科学 山本 安則

【一般演題 SessionⅡ】(ESD後潰瘍/10:05 - 10:55)

司会:自治医科大学 富士フイルムメディカル国際光学医療講座 山本 博徳

群馬大学大学院医学系研究科 内科学講座 消化器・肝臓内科学分野 浦岡 俊夫

  • Ⅱ-01:胃ESD後粘膜欠損に対する折り紙法による縫縮の検討

    島根大学医学部附属病院 消化器内科 高橋 佑典

  • Ⅱ-02:胃ESD後の後出血予防を目的としたMuscle inversion closure techniqueを用いた創部閉鎖の検討

    北九州市立医療センター 消化器内科 隅田 頼信

  • Ⅱ-03:新たな鎖状糸格納式・フック付き縫合用先端アタッチメント(HAWKS)縫合器によるESD後潰瘍閉鎖と全層縫合への応用

    愛媛大学大学院医学系研究科 先進消化器内視鏡開発学 森 宏仁

  • Ⅱ-04:Reopenable-clip over the line method(ROLM)を用いた欠損閉鎖の工夫

    鈴鹿中央総合病院 消化器内科・内視鏡センター 野村 達磨

  • Ⅱ-05:大腸ESD後粘膜欠損に対するDouble-Layered Suturingの有効性

    淡海医療センター 消化器内科 伴 宏充

  • Ⅱ-06:大腸ESD後粘膜欠損部に対するUpdated double-layered suturingの有効性の検討

    神戸大学医学部附属病院 消化器内科 西川 恵璃

【一般演題 SessionⅢ】(大腸 Deeplayer・fistula/10:55 - 11:45)

司会:JA尾道総合病院 田中 信治

鈴鹿中央総合病院 消化器内科 野村 達磨

  • Ⅲ-01:術後吻合部の再発に対して内視鏡切除およびEOLM縫縮を行った一例

    国立がん研究センター中央病院 内視鏡科 水谷 悟

  • Ⅲ-02:Thread Traction Technique(T³)を用いた内視鏡治療後欠損部閉鎖の工夫

    福岡大学 消化器外科学講座 佐藤 誠也

  • Ⅲ-03:超高齢者の医原性消化管穿孔に対しOver-The-Scope Clip(OTSC)による内視鏡的閉鎖を行い早期退院が可能であった1例

    板橋中央総合病院 消化器病センター 伊藤 洋平

  • Ⅲ-04:高度肥満患者のS状結腸憩室炎後、慢性腹壁瘻孔をOTSCによる内視鏡的閉鎖で保存的加療し得た1例

    板橋中央総合病院 消化器病センター 永江 真也

  • Ⅲ-05:Multiple OTSCs over-the-line methodにて瘻孔閉鎖を行った一例

    市立四日市病院 消化器内科 小林 真

  • Ⅲ-06:ハルトマン術後の結腸直腸瘻に対して内視鏡的手縫い縫合法に成功した1例

    神奈川県立がんセンター 消化器内科 南方 信久

【ランチョンセミナー】11:55 - 12:45

司会:東京慈恵会医科大学 内視鏡医学講座 炭山 和毅

「One-and-Doneを目指して~サステナブルな創閉鎖の模索~」

演者:NTT東日本関東病院 消化管内科 港 洋平

共催:オリンパスマーケティング株式会社

【一般演題 SessionⅣ】(EHS・胃EFTR/12:55 - 13:45)

司会:静岡県立静岡がんセンター 内視鏡科 小野 裕之

都立駒込病院 消化器内科 後藤 修

  • Ⅳ-01:ギザギザのある針(barbed needle)を用いた内視鏡的手縫い縫合の経験

    昭和医科大学江東豊洲病院 消化器センター 田丸 雄大

  • Ⅳ-02:直腸における内視鏡的手縫い縫合法(endoscopic hand suturing: EHS)の工夫―大径先端透明フードを用いたフード内収納法―

    広島市立北部医療センター安佐市民病院 内視鏡内科 鴫田 賢次郎

  • Ⅳ-03:内視鏡的手縫い縫合法を用いた内視鏡的スリーブ状胃形成術:ex-vivo/in-vivo study

    日本医科大学 消化器内科学 石川 裕美子

  • Ⅳ-04:粘膜下トンネルを用いない食道GISTに対する内視鏡的全層切除の一例

    昭和医科大学江東豊洲病院 消化器センター 山本 和輝

  • Ⅳ-05:胃粘膜下腫瘍に対する内視鏡的全層切除術の導入経験

    奈良県立医科大学附属病院 消化器・代謝内科 森 仁志

  • Ⅳ-06:内視鏡的全層切除術が困難であった胃前庭部前壁の粘膜下腫瘍の一例

    大阪国際がんセンター 消化管内科 上堂 文也

【一般演題 SessionⅤ】(胃EFTR/13:45 - 14:35)

司会:杏林大学医学部 消化器・一般外科 阿部 展次

大阪国際がんセンター 消化管内科 上堂 文也

  • Ⅴ-01:当院の内視鏡的全層切除術における創閉鎖の現状

    東京慈恵会医科大学 内視鏡医学講座 栽原 麻希

  • Ⅴ-02:胃EFTR後の全層欠損閉鎖に対するMANTIS Clipを用いたTwo-layer closure methodの有用性

    静岡県立静岡がんセンター 内視鏡科 川田 登

  • Ⅴ-03:胃粘膜下腫瘍に対する内視鏡的全層切除術(EFTR)の導入経験―EROPPからpure EFTRへの展開

    国立病院機構岡山医療センター 消化器内科 万波 智彦

  • Ⅴ-04:胃EFTR後ROLM閉鎖後のクリップ残存率の検討:胃ESDとの比較

    大阪国際がんセンター 消化管内科 森田 宗新

  • Ⅴ-05:胃SMTに対する筋層以深内視鏡的胃局所切除におけるEHSの経験

    杏林大学 消化器・一般外科学 竹内 弘久

  • Ⅴ-06:Endoloop-Lock(EL Lock):食道胃接合部における新たな内視鏡的縫合法

    福岡大学 消化器外科 塩飽 晃生

【一般演題 SessionⅥ】(穿孔・十二指腸/14:35 - 15:20)

司会:埼玉医科大学国際医療センター 消化器内科 良沢 昭銘

NTT東日本関東病院 消化管内科 大圃 研

  • Ⅵ-01:外付けチャンネルを活用した可動式Dual-channel内視鏡(DAICE)による巨大大腸穿孔閉鎖の1例

    昭和医科大学江東豊洲病院 消化器センター 角 一弥

  • Ⅵ-02:側視鏡挿入に伴う上十二指腸角穿孔に対しMANTIS™クリップを用いて内視鏡的縫縮し手術回避し得た2例

    愛仁会千船病院 関口 尚人

  • Ⅵ-03:Modified double-layered suturing(Origami method)による十二指腸ESD後縫縮の再現性

    慶應義塾大学医学部 腫瘍センター 低侵襲療法研究開発部門 増永 哲平

  • Ⅵ-04:十二指腸における粘膜・全層欠損閉鎖の工夫:Reopenable-clip over the line method(ROLM)

    鈴鹿中央総合病院 消化器内科・内視鏡センター 野村 達磨

  • Ⅵ-05:十二指腸腫瘍に対する全層切除を含めた腹腔鏡内視鏡合同手術D-LECSの有用性

    埼玉医科大学国際医療センター 消化器病センター 渡辺 雄一郎

【ミニレクチャー1】15:20 - 15:45

司会:愛媛大学大学院医学系研究科 先進消化器内視鏡開発学講座 森 宏仁

「内視鏡的消化管全層切除の現況~新デバイスの活用を含めて~」

演者:香川大学 医学部 消化器・神経内科学 小原 英幹

共催:エム・シー・メディカル株式会社

【ミニレクチャー2】15:45 - 16:10

司会:国立がん研究センター中央病院 内視鏡科 斎藤 豊

「これがDuETs(Dual-operator Endoscopic Tandem surgery)!~消化管腫瘍に対する新たな内視鏡治療手技の提案~」

演者:長崎みなとメディカルセンター 消化器内科 岡村 卓真

共催:富士フイルムメディカル株式会社

【最優秀演題賞表彰式】16:10 - 16:15
【閉会挨拶】16:15 - 16:20

次回当番世話人:杏林大学医学部 消化器・一般外科 阿部 展次

当番世話人:神戸大学大学院 消化器内科学分野 豊永 高史

【第7回内視鏡的全層切除・縫合法研究会協賛企業】

株式会社アムコ
株式会社ウイン・インターナショナル
エム・シー・メディカル株式会社
ORTメディカル株式会社
オリンパスマーケティング株式会社
株式会社カネカメディックス
株式会社スリー・ディー・マトリックス
株式会社トップ
富士フイルムメディカル株式会社
ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社
(五十音順)

第7回内視鏡的全層切除・縫合法研究会の開催に際し、上記の企業の多大なるご援助をいただきました。ここに厚く御礼申し上げます。

2025年12月

第7回内視鏡的全層切除・縫合法研究会 当番世話人
神戸大学大学院 消化器内科学分野

豊永 高史